[Forum] ユビキチンフォーラムにスレッドが投稿されました

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2012年 12月 30日 (日) 20:29:04 JST


PubmedID: 22895187
日時: 2012/12/29 11:12:01
投稿者: 東京工業大学 大学院生命理工学研究科 駒田研究室 ダオチャラッド ブラナさん
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タイトル: Wnt受容体FrizzledのE3酵素が同定された(その2)
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1つ前のスレッドに引き続き、別のグループが別のアプローチからZNRF3とRNF43をWnt受容体FrizzledのE3酵素として同定した論文です。

この論文の著者らは、小腸上皮のクリプト底部に存在する幹細胞(細胞膜タンパク質LGR5陽性)で特異的に発現している遺伝子としてZNRF3とRNF43を同定しました。小腸上皮でZNRF3とRNF43をダブルノックアウトすると細胞の過増殖、アデノーマの形成が起き、細胞内でβ-カテニンの蓄積とWnt標的遺伝子の発現上昇が見られました。また、ダブルノックアウトマウスから調製した小腸上皮構造体(小腸オルガノイド)は、Wntシグナルを増強するR-スポンジン非存在下での生育期間が著しく延長しており、小腸上皮でもZNRF3とRNF43がWntシグナリングのネガティブ制御因子であることが示されています。

生化学的、細胞生物学的な解析結果は1つ前のスレッドで取り上げた論文と同様ですが、ZNRF3やRNF43によるFrizzledの分解亢進がリソソーム阻害剤に感受性であること、ZNRF3やRNF43の過剰発現によりFrizzledがリソソームへの輸送経路(エンドソーム)に蓄積することを示すデータが含まれており、ZNRF3とRNF43がFrizzledをユビキチン化してそのリソソームへの輸送/分解を促すと結論しています。

最後に、1つ前のスレッドの論文でも議論されていることですが、最近RNF43のヘテロ接合性喪失や機能喪失型変異が膵臓癌や胆管癌で見つかっており、これらの治療にはAPCなどの細胞内Wntシグナル伝達因子の異常による癌と異なり、Wntの分泌や受容体活性化のステップの阻害剤が有効となる可能性が指摘されています。
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