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2015年 5月 25日 (月) 11:10:17 JST


PubmedID: 25982115
日時: 2015/05/25 11:05:17
投稿者: 名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻 分子修飾制御学(嘉村巧教授) 中務邦雄さん
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タイトル: SCF(Ucc1) はグリオキシル酸回路の代謝スイッチとして機能する
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微生物や植物に特有の代謝経路であるグリオキシル酸回路は、微生物によるバイオ燃料の生産のプラットフォームとして注目されているだけでなく、病原性の酵母の感染や植物の種子の発芽に必須の役割をはたすことが知られています。これらの生物はグルコースが不足すると酢酸や脂肪酸を材料にグリオキシル酸回路→クエン酸回路→糖新生という一連の代謝反応によりグルコースを合成します。これまで、グリオキシル酸回路の活性は、グルコースが豊富にあると低いレベルに抑制されること、グルコースが不足して酢酸や脂肪酸が炭素源として細胞に取り込まれると高いレベルに活性化されることが知られていましたが、そのスイッチのくわしい分子機構は明らかにされていませんでした。
本研究では、機能が未知であった出芽酵母のFボックスタンパク質Ylr224w(のちに,Ucc1と命名)に着目して、Ucc1と結合するタンパク質を網羅的に検索した結果、クエン酸合成酵素Cit2を同定しました。Cit2はグリオキシル酸回路においてオキサロ酢酸とアセチルCoAの縮合反応を担うクエン酸合成酵素です。様々な解析の結果、グルコースが豊富にあるとユビキチンリガーゼSCF(Ucc1) がCit2 をユビキチン化しその分解を促進してグリオキシル酸回路の活性を抑制することを見出しました。また、グルコースが不足して酢酸や脂肪酸からグルコースを合成する必要が生じるとSCF(Ucc1) はCit2 をユビキチン化できなくなり安定化したCit2 がグリオキシル酸回路を活性化することも分かりました。この研究は、代謝経路の活性が代謝酵素の分解により制御されるというユニークなスイッチの分子機構について明らかにしたものといえます。今後、バイオ燃料などの有用物質の生産をめざす代謝工学および感染症の克服をめざす医学などの分野において、Ucc1 は重要なツールおよび標的になると期待されます。

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