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2014年 12月 12日 (金) 18:06:51 JST


PubmedID: 25485838
日時: 2014/12/12 06:12:51
投稿者: 東京工業大学生命理工学研究科 駒田研究室 川口紘平さん
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タイトル: 脱ユビキチン化酵素USP8の機能獲得型変異がクッシング病を引き起こす
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私たちは最近、脱ユビキチン化酵素USP8(別名UBPY)の体細胞変異がクッシング病を引き起こすメカニズムを解明しましたので、紹介させていただきます。

クッシング病は、脳下垂体の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生細胞の良性腫瘍がACTHを過剰分泌することで発症します。ドイツのReincke博士、Fassnacht博士らのグループがクッシング病患者から摘出した下垂体腫瘍のゲノム解析を行った結果、17例中6例(35%)においてUSP8の14-3-3タンパク質結合モチーフRSYSSPに体細胞ホットスポット変異を発見しました。私たちは、これらのUSP8変異がクッシング病を引き起こす分子機構について彼らと共同研究を行い、以下のことを見出しました。

発見されたUSP8変異体は14-3-3タンパク質結合能を失い、その結果、14-3-3結合モチーフのすぐN末端側で限定分解を受けやすくなっていました(切断部位の同定は都医学研の佐伯泰先生、田中啓二先生との共同研究です)。切断されて生じたC末端側の40-kDa断片(C40)はほぼ酵素活性ドメインのみからなり、野生型USP8より高い酵素活性を獲得していました。C40はUSP8の基質である上皮細胞増殖因子(EGF)受容体を過度に脱ユビキチン化し、リソソームへの輸送シグナルとなるユビキチンを外すことにより活性化されたEGF受容体の細胞膜へのリサイクリングを促しました。その結果EGFシグナルが持続的に増強され、そのシグナル伝達の下流にある細胞増殖あるいはACTH前駆体タンパク質プロオピオメラノコルチン(POMC)の遺伝子発現が亢進され、ACTHの過剰分泌(=クッシング病)につながるという分子機構が解明されました。

本研究により、ユビキチン化と脱ユビキチン化のバランスによる増殖因子シグナリングの新たでユニークな“quantity control”のメカニズムと、その生理的な重要性を示せたのではないかと考えています。

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